300SD(W126)のエンジンと車体整備

 

メルセデス・ベンツ300SD(W126)の直列5気筒ディーゼルターボエンジン、2998cc・125馬力。

1970年代~80年代のメルセデス・ベンツに使用されたこのエンジンはOM617シリーズと呼ばれ、メルセデスの哲学「最善か無か」をよく表したエンジンの一つである。事実、300SD等に積まれたこのエンジンは、80万kmを超えてなお動き続けている個体があり、これまで作られたディーゼルエンジンの中で最も信頼性や耐久性が高いと評価されている。

・Wikipedia (en):Mercedes-Benz OM617 engine
http://en.wikipedia.org/wiki/Mercedes-Benz_OM617_engine

 これは私の想像ではあるが、300SD・W126が開発された当時の背景にはオイルショックがあり、そのことがメルセデス・ベンツがこの飛びぬけて堅牢なエンジンを当時のS-classに載せた理由になっているのではないかと思う。つまり、オイルショックによって、世界のどこかの地域で、従来の燃料の品質が保てないような事態が起こったとしても、メルセデス・ベンツのS-classは、ノートラブルで動き続ける。すでに当初からある種のマルチ燃料対応を前提として世に出された車・エンジンではないか、という気がするのだ。

また、軍隊で使用する車の多くはディーゼルエンジンである。それにはいくつかの理由があるが、まず第一に戦車や船舶、その他の大型装置を駆動するエンジンの多くはディーゼルであり、燃料の共通性を持たせていることと、第二に軽油はガソリンよりもずっと引火性が低く、誘爆しにくいこと、があげられる。

すなわち、ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりも、軍事的には重要なポジションを占めるエンジンであり、300SD・W126に搭載されたディーゼルエンジンも、そうした軍事用エンジンの性格を帯びているといえるかもしれない。事実、メルセデス・ベンツのRV車であるG-class・W460はかつて軍用車両であったものを民生用にアレンジしたものであり、その心臓部にはOM617・OM616等が使われている。

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さて、そのような背景を知っていようがいまいが、バブル期にW126は日本で飛ぶように売れ、そして今やスクラップになろうとしている、いやほとんどがもうスクラップなってしまった、あるいはどこか別の国に行ってしまった、といっていいだろう。

そうなってしまう理由は、単純だと思う。車はエンジンだけでは走らない。
エンジンが80万km動くポテンシャルを持っていても、経年劣化により消耗部品が壊れ、その車の最後のオーナーが、それらの整備に何らかのメリットを見出さないときに、車としての寿命は尽きることになる。

走らなくなったディーゼルエンジンのベンツからエンジンだけとって、灯油や天ぷら油で動く小型コージェネレーターにリサイクルできたらいいのに、とよく思う。しかし、あくまでも車として‘快適’に利用できるよう維持するなら、それなりの出費と覚悟が必要ではある。

きちんと維持するなら税金や保険の額も無視はできない。大手メーカーの作るハイブリッドカー等には、個人購入におけるエコカー補助金や様々な免税制度があるものの、バイオディーゼル車の個人利用に関しては、現在とくに何らかの補助金や免税制度があるわけではない。
正直、大手メーカーの‘新車販促’にのみ有利で、たくさんの人々に‘新たな消費’をさせるための補助金や制度は多いのに、個人や中小企業、市民が自主的にリサイクルをしたり、モノを大切に使おうとするための制度が、非常に限られている現状には深い疑問を感じる。

しかし、愚痴だけをいっても埒があかないし、そもそも楽しくないので、私は(経済的な余裕がある限り)とにかく車のトラブルも楽しんで、またその経験を誰かの参考になるようにしたい。そして願わくば今余裕のある人は、ぜひそういう他人にはできないことにどんどんチャレンジして、今後の日本人のための糧を残してほしいと思っている。なぜならそれが、オイル・ピーク以降になっても、震災などの天変地異があっても、最低限人々が幸せに、楽しく生きることの参考や指標になる、と思うから。準備は早い方がいい。

というわけで非常に前置きが長くなりましたが、次回からは最近起きたルネッサンス号のトラブルや整備について具体的に記載したいと思います。
ちなみにほとんどの整備は、ルノー松山(松山自動車販売)さんにお願いしています。いつも本当にお世話になりますm(_,_)m

投稿日 : 2012/09/04 | カテゴリー : トラブル・コンディション, 車体側詳細, 近況/その他, 進行状況 |

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